高取正男『神道の成立』
- 作者: 高取正男
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1993/06/01
- メディア: 新書
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著者(1926−1981)は京大出身、京都女子大教授。専攻は民俗学。
本書は1979年のもの。既発表論文をまとめたもの。
民俗学からの古代の信仰や歴史へのアプローチとしては、個人的に一番説得的だったように思う。
ただし、神道とは何か?とか、「日本の宗教」といったものの答えを期待するなら本書に当たるのはお門違いかもしれない。
ここで言う神道とは、伝統的神祇信仰のこと。
日常的習俗として信仰されていた神に、多様な神道教説を盛り込んでいくような宗教を指している。
「神学」化する神道と素朴民間信仰の間にあるものと言えばいいのか。
では、こうした神道がどのように成立するのか。
著者が注目するのが、8世紀、桓武天皇辺りだという。
仏教(密教)がすでに広がりを見せたこの頃、ようやく咀嚼されてきた儒教や道教といった中国思想を梃子に、仏教(政治)への自覚的な距離をとり始めた所にそれは由来する。
しかもこの議論は、朝廷の儀礼中心で終わるわけではなく、それが貴族、そして民俗信仰へと広がる所まで射程に入れている点も、1970年代の議論としてはなかなかのものであったのでは。
やはり浄穢観念をめぐる習俗というのは、信仰面を理解する上で一番手っ取り早い指標になるのを再認識。
ともあれ、著者のこの評価に対する是非は残念ながら門外漢の自分にはつけられない。
ただ、その論証の過程に一部多少強引な部分があるものの、その指摘自体は大変興味深い。