山田文比古『フランスの外交力‐自主独立の伝統と戦略‐』
- 作者: 山田文比古
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 新書
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著者は、ストラスブール政治学院、フランス国立行政学院(ENA)に留学、フランス国際関係研究所(IFRI)客員研究員で駐仏大使(当時)。
1954年生まれ。
人口、日本の約半分。
GDP、日本の4割程度。
客観的な国力という点では「ミドルパワー」にすぎないのに、ではなぜフランスは、国際社会でのプレゼンスを有し、自主独立外交を展開できるのか。
アメリカと一度も敵になったことの無いこの国が、なぜイラク戦争の時、アメリカに「ノン」を突きつけることができたのか。
そこには、それを可能にするいくつかの「切り札」をフランスが所有していると同時に、というかなによりも一貫して、国力とは身の丈に合わない、「外交大国」たる道を選び、そのヴィジョンを高く標榜したところにフランスの独自性があると著者は見る。
フランスの外交力を担保する切り札は5つに整理する。
ただ、フランスの軍事力は世界第2位というのは確か触れていなかった。
本書を通して見えてくるのは、第2次世界大戦、戦後復興において、結局アメリカの力に頼らざるを得なかったという屈辱と反省、「宿敵」ドイツに対する「和解」への苦闘。
これが左右どちらの政権が就いても、外交姿勢における一貫性が保たれてきた要因であること。
「ド=ゴール主義」。外交に関しては、左派・右派ともにゴーリストになる。
あとやはり特筆すべきは、フランス外交の力の源泉が文化であるという点。
軍事関係に疎いので知らなかったのだが、現在フランスの戦略的自主性を保つ上で、核は中心的なものではないと位置づけている点。
核のカードはフランス外交において、優先度が低くなっていると見ていい模様。
フランスは「身の丈に合わない」ヴィジョン実現のために、もちろん色々あこぎなことをしてきているし、重大な失策もしてきている。
フランス自身の外交に対するヴィジョンと努力があったことは認める一方で、やはりアメリカとドイツ(あとソ連)との関係が、フランスを「外交大国」に鍛え上げた面は否めない。
崇高かつ明確な「世界観」を提示し、それ実現するための実力を準備するが、文化を中心とするソフトパワーを主たる「武器」として世界に打って出る。そして国際社会において、「大国」としての存在感を見せることに一定の成功を収めてきている。
国力の点ではミドルパワーのくせに、かなり無茶なことをやり続けているフランスというのは、やはり興味深い。
著者は、あのイラク戦争の時、フランスは結局アメリカに「折れる」と読んでいた。
結果、フランスはアメリカに「ノン」を突きつけるのだが、著者は自身の読みがなぜはずれたのか、その反省を込めた復習として、本書を書いたという。
だが、結局本書では著者自身の読みがはずれた原因が何だったのかは明らかにされないままで終わった。
そういう点が、本書を「軽い」ものにしてしまっている感が否めない。
仮にも当時駐仏大使なんだから、その読みが外れたことは重大な問題だったのではないのだろうか?
フランスの政治を学んでいる者にとっては当たり前すぎて退屈な内容かもしれないが、入門としてはお勧め。