窪田蔵郎『鉄から読む日本の歴史』
- 作者: 窪田蔵郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/03/10
- メディア: 文庫
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初版1966年。
著者は明治大学専門部法科卒。1926年生まれ。
日本鉄鋼連盟に勤務する傍ら、鉄についての歴史学・民俗学的調査を行っていた人物。
あとがきに拠れば、著者は中学の歴史教員になりたいと思っていたが夢叶わず、鉄鋼の仕事でサラリーマンになった。
生活が落ち着いてから、日曜日に少しずつ歴史の勉強をし、鉄鋼の仕事柄、日本の歴史と鉄を結びつけて考えるようになり、参考文献を求めて土曜の午後は神田の古本屋街をあさり歩き、そこを一通り探しつくすと、上野の図書館に通って研究し、ゴールデンウィーク、夏休みにはとぼしい小遣いで各地の製鉄関係の遺跡を歩き始めたという。
また、各地の製鉄遺跡の出土品調査や鉄滓採集したり、その土地でのフィールドワークのノートを年々溜め込んでいった。
フィリップ・アリエスの向こうを張る程の、まさに「日曜歴史家」。
長年の研究の成果が本書。
1960年代当時、日本史学で、技術史、とりわけ考古学的知見も踏まえて、古代から近代まで、日本の鉄の通史でまとまった研究というのは本書までなかったらしいので、まさに記念碑的作品。
とはいえ、歴史的事実の列挙で留めている禁欲的叙述スタイルがやや物足りなく感じる点はある。
あと、註と参考文献も載っていないが悔やまれる。
コルサバードのアッシリア帝国サルゴン王宮跡から160トン!もの鉄の半製品(多目的加工用の鉄)が出土されたと記述があるが、本書では出典がわからない。
めっちゃ気になる。
ちなみに本書が『宗像教授』のタネ本の1冊でしょうな。
鉄の歴史を学ぶ入り口として、いまだ十分にその役割を果たしている良作。