三浦佑之『古事記を読みなおす』
- 作者: 三浦佑之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/11/10
- メディア: 新書
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かなり挑発的な古事記研究。
「記紀」という捉え方に疑義を呈する。
昨今の記紀研究では、当たり前になってきているように、古事記研究史というか、古事記のメタヒストリーにもきちんと目配りされている
特に面白いのが、古事記の「序」の問題点。
以前から古事記の「序」に関しては疑いがかけられていたそうだが、その疑問点・最近の古代日本語表記研究などの成果なども踏まえて、改めて「序」の問題を提示する。
この序のおかげで、古事記の成立年代、作者、編纂意図、古事記そのものの解釈など諸々の事柄がすっかり騙されていた可能性を指摘する。
つまるところ、古事記は国家の史書ではない。
かなり刺激的な主張。
しかし、古事記の内容、日本書紀との関係を考えると、著者の主張はなるほどと思わせてくれる。
ところで、反論が呉哲男のみだそうで、しかもカントロヴィッチの「王の二つの身体」を援用したものというのは、氏の反論内容読んでいないので何とも言えないが、よく分からない反論の仕方に感じる。
その他多くの記紀研究者は黙殺ということのよう。
では誰が古事記の「序」を書いたのか。
その「犯人」というか、「容疑者」特定までには至れなかったのが残念。
古事記研究では、著者は出雲をどう読むかについて、より焦点を当てていく方向に進んでいる模様。
神話解釈では、多少疑問点もあるが、大筋ではかなり興味深い指摘をしている。
おススメ本。