SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

アビ・ヴァールブルク『異教的ルネサンス』


異教的ルネサンス (ちくま学芸文庫)

異教的ルネサンス (ちくま学芸文庫)


論文集。
と言っても23本立て。

1.「イタリア美術とフェッラーラのスキファノイア宮における国際的占星術
2.「ルター時代の言葉と図像に見る異教的=古代予言」
3.「東方化する占星術


1.は講演。これはまだイコノグラフィー的研究と言えるでしょうか。
ヴァールブルクの研究史上、あるいは「学派」形成史上としても、この論文はひとつのメルクマールと位置づけられているような印象を受けましたが、正直、美術史ズブの素人的には、なんでこのスキファノイア宮の図像の解釈がそれほど問題だったのか、今ひとつわからなかった。

ただし、解釈の展開プロセスは確かに、当時としては結構スリリングなものだったのかもしれないとの雰囲気は感じた。
あと、全然掘り下げられていなかったが、13世紀トレドのアルフォンソ賢王の宮廷とヘレニズム的自然哲学の独特の「復活」というのは、結構惹かれた。

2.は晩年彼が精神的に病んでいる時に書き溜めた草稿。
正直、個人的にはこちらの方が面白かった。
単なる絵解きで終るのではなく、図像から精神史的認識価値を引き出そうという意志を示している点、こちらの方がイコノロジーを志向していく姿勢が出ていた。

思考空間を概念的な分節操作によって―人間と対象物のあいだに―作り出す論理と、他方迷信に基づいて人間と対象とを―観念的あるいは実践的に―関連づけ、結合させることによりまさにこの思考空間を破壊する魔術、この両者が占星術の予言的思考においてはなおも一つの統一性をもった単純素朴な道具として使われており、占星術師はこれを使って測量し、同時に魔法をかけることができる。


論理と魔術が、直喩と隠喩とのように、「一つの同じ幹に根を下ろし花開く」

                                                 120頁

あと、メランヒトンが結構面白い人物であるという認識はもてた。

3.は短い講演。