SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

バルトルシャイティス『幻想の中世』


幻想の中世〈2〉ゴシック美術における古代と異国趣味 (平凡社ライブラリー)

幻想の中世〈2〉ゴシック美術における古代と異国趣味 (平凡社ライブラリー)



懐かし関連で。
学部か修士くらいの時か。
原著は1981年。
しかし中身の仕事は1930−40年代くらい?


時代は13世紀がメイン。
彼に言わせれば「幻想」は13世紀なのです。


貴石、レリーフ、古銭、織物、陶器等、この時代に見られる諸々の装飾美術に現われる、異形・奇想のルーツとその流布と変遷をこれでもかと言わんばかりに網羅した研究。


しかし、13世紀ゴシック美術は教会になんと多くの異教芸術を盛り込んだことよ。


著者の博識ぶりが凄まじい。
入門書的なレヴェルからとはいえ、中国、ペルシア、中国仏教やイスラーム美術などについてかなり勉強している。
画法とか、風水思想とか、織物・陶器製作レヴェルでも。


ただし、これだけ読むと、東→西の一方向的な美術様式伝播図式に捉えられてしまうが、その逆とかどうなのか?など。

あと訳語が緩い(訳文ではない)。特にラテン語訳、地名。


個人的にはバルトルシャイティスの中世での仕事はあまり好きではない、というか面白いとはあんまり思えない。
良くも悪くもイコノグラフィーに終始しているせいなのかもしれない。
ぶぁーっと並べられて凄いんだが、「で?」っていう感想がつきまとう。


まあ、彼が学を積んでいた1920年代のフランス中世美術史の状況よく知らないが、フォションしかり、なんと言ってもマールが君臨していた時代でしょうからな。
そらしょうがないですよね。
マールも文章が詩的なせいで騙されるけど(失礼)、あれもよく考えると「で?」っていう感じですし。


それを考えるとヴァールブルクの流れは改めて凄いと思った。
ほぼ同時期だし。


しかし中世アイルランドでは鵞鳥は樹に生えるんだそうで。
ソース何だかは不明。