SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

『西洋音楽の曙〈西洋の音楽と社会1 古代・中世〉』


西洋の音楽と社会(1) 西洋音楽の曙 古代・中世

西洋の音楽と社会(1) 西洋音楽の曙 古代・中世


哲学と並んで苦手ジャンル。

まず音楽用語をよく知らないから大変。

3度と4度と5度って?

全3度って?


音楽って数学だし。


教会音楽の主要ジャンルもあまりよく分からない。CDとかで聴いてもあんまり。
色々持っているんですけどねぇ。


面白いと思ったのが、音楽の飛躍が10−11世紀だったということ。
普通、この時代は「暗黒時代」なんと言われ、史料も少ない。
ムスリムヴァイキングの侵攻、カロリングの崩壊による権力の解体・細分化、それに伴う城主乱立、争乱の時代。
この10−11世紀=断絶の時代というイメージは、かのデュビー Georges Duby 以降定説化して学会を支配してきたわけです。
千年を境にガラッと世界が変わると。


しかし、昨今の学会では、この feudal anarchy 像・断絶説は崩れつつあります。
カロリング以後も秩序はあったし、断絶ではなくむしろ連続しているという議論が盛んに行われてきています。
この「封建革命論」に鋭く突っ込んでいるのが、主にアメリカとフランスの学者達。
昨今流行の紛争解決論はこの流れにあるわけです。


ただ、この時代の問題は、圧倒的に史料にバラつきがありすぎること。
基本的に大半が教会側のテクストであるのは仕方ないにせよ、ある地域では証書系の史料しかなかったり、別の地域では聖人伝や年代記のようなナラティヴな史料しかない。
たぶん、この史料残存状況の地域分布を精査すれば、面白い成果が出るんだろうとも思います。


こういう文脈で見ると、中世音楽がこの時期に発展していくのがとても興味深く思えてきます。
単に音楽テクストが大量に残されたというだけでなく、記譜法の発明など、音楽理論上の発展が現われているわけで、こういう事象を広い文脈にいかに位置づけられるか、興味が湧くところです。


僕は13世紀をフィールドにしている観点からこの本に当たったんですが、やはり13世紀の音楽の発達は注目すべき事件ですね。
かなり僕のジャンルで知っている人間が音楽でもちらほら出てくるし。