木村靖二『第一次世界大戦』
- 作者: 木村靖二
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/07/07
- メディア: 新書
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著者は東大名誉教授。専門はドイツ近現代史。
2014年の今年は第一次世界大戦勃発100周年ということで、関連書籍が結構出版されているが、その中でも一番値段的にお手頃で、かつ最新の研究動向もカヴァーした信頼のおける入門書となるのが本書といってよかろう。
とは言うものの、第一次世界大戦は、日本ではさほどしっかり認識されているものとも言えない「忘れられた戦争」になってしまっているのも事実。
たぶん日露戦争と第二次世界大戦の方が、その戦争の詳細についてはよく知っている人の方が多いかもしれない。
詳しい流れは省くとして、この戦争からわかったことを何点かメモ。
- 軍人は短期決戦の作戦立案はそこそこのものを作れるが、長期戦の作戦立案になるとまるでダメになる。
- 経済、社会、諸々の要因が複雑に絡むことになってしまうため、戦争遂行方法、戦時体制の場合、経済や社会に及ぼす影響とそれが戦争に与える影響など、軍人が明確に計算することは不可能ということ。
- 総力戦の勝敗を決めるのは、経済力、人口、社会福祉力。科学技術力は二の次。
- そして戦争を軍人に任せてはいけないということ。
- 戦争の最中こそ、外交力が勝敗の趨勢を決めるということ。
しかし改めてこの戦争をつぶさに見ると、対外戦争・侵略戦争なんぞするだけ無駄だということがよくわかる。人命を大量に失って、国力を大幅に消耗するだけで、損失の方が大きすぎる。勝っても負けても。総力戦を継続するということは国を亡ぼすということ。
これほど割に合わないものはない。