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SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

佐佐木隆『日本の神話・伝説を読む』

日本の神話・伝説を読む―声から文字へ (岩波新書)

日本の神話・伝説を読む―声から文字へ (岩波新書)


著者は学習院大教授。専門は古代日本語学・古代文献学。1950年生まれ。


古代語研究から読む日本神話。しかし新書という体裁のせいかも知れないが、個人的には物足りない内容だった。


基本的確認事項として、現代の日本語は47音節だが、古代では67音節であるということ。
これがどういった分析のプロセスを経て明らかになったものかは素人には不明。


音の近縁性を使った連想による語りから、文字によって記録される語りへの変化を古事記日本書紀や古風土記などの叙述から明らかにしていく。


しかし、漢字の持つ意味ではなく、音の近さによって、神名、人名やそれらの行為、あるいは地名などがつながり合って物語られるというが、確かにそういうこともあるだろうとは思うけれども、それで解釈するには結構強引な印象を受ける事例もあった。
下手すると駄洒落で語っていたのかということにもなる。ならばそのようなスタイルで語る意味まで問わねばならないだろうが、そこまで踏み込んだ答えは用意されていなかった。


なにぶんこちらは門外漢のため、最近の古代語研究がどういう分析手法を用いるのか、本書からではいまひとつわからなかった。
個人的には、言語学、人類学、認知科学的なアプローチを駆使するのかと思っていたが、それらしいアプローチはどうも使われていないような印象。
注は少しあるが、参考文献が無いのが残念。本書からでは興味関心を広げられない。