SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

ジャン・ボベロ『フランスにおける脱宗教性(ライシテ)の歴史』

ここ数年のクセジュの訳は良い。

Baubérot, Jean., Histoire de la laïcité en France (Paris: Presses universitaire de France, 2000).
の訳。

著者はフランス国立高等研究院(EPHE)の宗教学の教授で同院長だった人物。
フランスの専門家によるライシテ研究の入門書としては、まず最初に読まれるべきものの一つ。



日本では、一言で「政教分離」として言われるものが、いかに国によってその成り立ちと位置づけと重みが違うものなのか、フランスのライシテの歴史はそれを教えてくれる好例の一つ。



ボベロは事象を切り取る表現が非常に巧みな印象。
これはどの学問分野にも関係なく、優れた研究者なら当たり前に有しているものではあるけど。


個人的には、ヴィクトール・クザンやスピリチュアリズムにかなり興味が湧いた。


あと、教育史関係の研究ではいつも思うのが、教師育成の具体的でもっとつっこんだ研究というのを知りたくなる。
それから教科書分析とか。
ライシテ研究だと、やはり教育に焦点が当てられるのは当然として、医療現場のライシテ研究というのも気になった。


訳文も読みやすく、かつ訳注の充実さと、訳者による解説が、フランスのライシテ研究の流れとボベロの位置づけなどを的確に整理されており、大変有益。