SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

 回顧と展望から気になったものを


さて、気になった文献をばいくつか。





総論


これは気になってるんですよねぇ。


歴史理論

考古学はどう検証したか―考古学・人類学と社会

考古学はどう検証したか―考古学・人類学と社会

歴史的時間について示唆的な議論を行っているとのこと。


『歴史の描き方』シリーズ。

ナショナル・ヒストリーを学び捨てる (歴史の描き方)

ナショナル・ヒストリーを学び捨てる (歴史の描き方)


近代日本の歴史学について多様な視点から議論を展開。


日本では、


考古縄文で、

心と形の考古学―認知考古学の冒険

心と形の考古学―認知考古学の冒険

が目に付きました。
「認知考古学」とは何かを論点整理したものとのこと。



古代

シリーズものとしては、<列島の古代史>

言語と文字 (列島の古代史―ひと・もの・こと 6)

言語と文字 (列島の古代史―ひと・もの・こと 6)

と<文字と古代日本>
文字と古代日本〈1〉支配と文字

文字と古代日本〈1〉支配と文字

に注目しました。


それから、

古代文字史料の中心性と周縁性

古代文字史料の中心性と周縁性

は、日本、中国、朝鮮、ギリシャ、ローマという古代東アジアと古代地中海の両世界の歴史のコンテクストの中の文字史料の性格を論じたシンポジウムの記録とのこと。


これ中国のところでも紹介されていましたが、注目のようです。


平安仏教と末法思想

平安仏教と末法思想


中世

中世の身体 (角川叢書)

中世の身体 (角川叢書)

院政期文学論

院政期文学論

中世軍記の展望台 (研究叢書)

中世軍記の展望台 (研究叢書)

今様の時代―変容する宮廷芸能

今様の時代―変容する宮廷芸能


芸能史に関しては、以下の論文集が気になりました。


近世

百姓一揆と義民の研究

百姓一揆と義民の研究

一揆や民衆運動研究というのはかなり下火になってきているようです。
本書は20年にわたる一揆研究の集大成。


近現代
これは総論でも取り上げられていました。
『岩波講座 アジア・太平洋戦争』シリーズ。

岩波講座 アジア・太平洋戦争〈1〉なぜ、いまアジア・太平洋戦争か

岩波講座 アジア・太平洋戦争〈1〉なぜ、いまアジア・太平洋戦争か

日本の200年〈上〉―徳川時代から現代まで

日本の200年〈上〉―徳川時代から現代まで

日本の200年〈下〉―徳川時代から現代まで

日本の200年〈下〉―徳川時代から現代まで

日本を対象に近代の「変奏曲」を描いたもの。日本的特殊性よりも日本の近代が抱え込んだ問題は、日本だけの問題でなく、世界史的に普遍性を持つという主張。そのため、日本の近現代史は一貫して世界の近現代史と不可分であったことを叙述の中心に据えだ作品。かつての近代化論とは異なり、労働運動、農民運動、女性史の視点を取り入れ、国家と社会間の対立、衝突、抗争をダイナミックに描こうと努めたものとのこと。


近代日本の誕生 (クロノス選書)

近代日本の誕生 (クロノス選書)

可能性としての歴史―越境する物語り理論

可能性としての歴史―越境する物語り理論

北清事変と日本軍

北清事変と日本軍

義和団出兵の研究は遅れていたとのこと。


戦後では、

戦後政治と自衛隊 (歴史文化ライブラリー)

戦後政治と自衛隊 (歴史文化ライブラリー)

は、前著
戦後日本の防衛と政治

戦後日本の防衛と政治

を平易化したもの。


は、輿論(=公的な意見)と世論(=大衆の心情)の二つの軸の交錯という視角から、『ビルマの竪琴』や『二十四の瞳』などを分析。


は占領下にアメリカ兵からレイプという集団暴力を受けた著者が、自殺未遂を乗り越え、「女性を守る会」に立ち上がっていったことにはじまる自伝的女性運動史とのこと。



近現代は他にも結構あって、飽きてきたので次。
東アジア

まずこれ。

中国史学史の研究 (東洋史研究叢刊)

中国史学史の研究 (東洋史研究叢刊)


今回、個人的に古代中国に面白い論稿多かったんですよね。


初期王朝の社会構造をめぐる議論。

国家形成の比較研究 (京都大学人文科学研究所共同研究報告)

国家形成の比較研究 (京都大学人文科学研究所共同研究報告)

周代中国の社会考古学

周代中国の社会考古学

西周後期から春秋にかけての「中国」世界の社会構造に対し、文字資料と考古学の両面から考察。






中国古代史と歴史認識 (歴史学叢書)

中国古代史と歴史認識 (歴史学叢書)

中国古代皇帝祭祀の研究

中国古代皇帝祭祀の研究

関連して、氏の前著、
古代中国と皇帝祭祀 (汲古選書)

古代中国と皇帝祭祀 (汲古選書)

も気になります。

さらに関連して、一昨年の作品ですが、これも気になります。

中国古代王権と祭祀

中国古代王権と祭祀

そして昨年作品ではありませんが、これも気になりました。

地域史では、

長江流域と巴蜀、楚の地域文化 (アジア地域文化学叢書)

長江流域と巴蜀、楚の地域文化 (アジア地域文化学叢書)

の論稿は注目。


隋・唐
直接当該時代と関わっているのかわかりませんが、紹介されていました。

近代

中国歴史研究入門

中国歴史研究入門

ほぼ20年ぶりに中国史研究全体に関する研究史回顧が行われたとのこと。
併せて、
21世紀の中国近現代史研究を求めて

21世紀の中国近現代史研究を求めて

も課題が指摘。

現代

中国の地域政権と日本の統治 (日中戦争の国際共同研究)

中国の地域政権と日本の統治 (日中戦争の国際共同研究)

日中戦争の軍事的展開 (日中戦争の国際共同研究)

日中戦争の軍事的展開 (日中戦争の国際共同研究)


内陸アジア

これは西アジアとかでも紹介されていました。

メソポタミアで誕生したグリフィンの時間的・空間的変容を辿り、それが東西に伝播していくプロセスを描写。


モンゴル時代の出版文化

モンゴル時代の出版文化

元朝時代の出版文化を言語・挿絵・地図などの側面にも目を配りながら検討し、モンゴル帝国が中国の出版文化を活性化させたと説く大作とのこと。

ロシア・ソ連期の中央ユーラシア


東南アジア

歴史叙述とナショナリズム―タイ近代史批判序説

歴史叙述とナショナリズム―タイ近代史批判序説

タイ近現代史における諸概念の再検討を通じて、既存の歴史像を描き直すとともに、国民国家ジェンダー関係について今後取り組むべき問題を提示したとのこと。


南アジア

デリー・スルターン朝、ムガル朝で、

インド中世民衆思想の研究

インド中世民衆思想の研究

があります。バクティ運動の諸相を原典から提示しようと試みたものとのこと。

フランス東インド会社とポンディシェリ (YAMAKAWA LECTURES)

フランス東インド会社とポンディシェリ (YAMAKAWA LECTURES)

本邦初の当該主題に関する専著。


西アジア
考古で面白い動きあった模様。単著では、

古代エジプト文明社会の形成―諸文明の起源〈2〉 (学術選書)

古代エジプト文明社会の形成―諸文明の起源〈2〉 (学術選書)

が目を引きました。


イスラームでは、入門書ですが、ダニエル・ジャカールの邦訳がでましたね。

アラビア科学の歴史 (「知の再発見」双書)

アラビア科学の歴史 (「知の再発見」双書)


近現代

現代エジプトにおけるイスラームと大衆運動

現代エジプトにおけるイスラームと大衆運動

ムスリム同胞団の歴史・思想の考察を通して「民主化」という言葉の多義性を浮き彫りにしたものとのこと。
アメリカの中のイスラーム (寺子屋新書)

アメリカの中のイスラーム (寺子屋新書)

現代イスラーム世界論

現代イスラーム世界論


アフリカ

『闇の奥』の奥―コンラッド/植民地主義/アフリカの重荷

『闇の奥』の奥―コンラッド/植民地主義/アフリカの重荷

レオポルド2世の私有地コンゴ自由国において約20年間で数百万人規模の人口減が起こったにも関わらず、コンゴ人の受難が「ほぼ完全に忘却の淵」に沈んだ理由を世に問うているとのこと。

アフリカ国家を再考する (龍谷大学社会科学研究所叢書)

アフリカ国家を再考する (龍谷大学社会科学研究所叢書)


ふう。やっとヨーロッパ
古代は特になし。
中世も特に研究書では特になし。主要なのは持ってるからよし。
さしあたり、

紛争のなかのヨーロッパ中世

紛争のなかのヨーロッパ中世

嘘と貪欲―西欧中世の商業・商人観―

嘘と貪欲―西欧中世の商業・商人観―

で。

近現代
イギリス

イギリス近現代女性史研究入門

イギリス近現代女性史研究入門

は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての植民地における環境保護主義の成立とその後の植民地林学の帝国林学としての再編過程に注目、植民地の環境保護主義がグローバルな環境保護主義に与えたインパクトを検証することでグローバル・ヒストリーとしてのイギリス帝国の環境史の可能性を示した作品とのこと。


フランス

リヨンのフランス革命―自由か平等か

リヨンのフランス革命―自由か平等か

これ気になってはいるんですが、高すぎて。

ドイツ・スイス・ネーデルラント

男たちの帝国―ヴィルヘルム2世からナチスへ

男たちの帝国―ヴィルヘルム2世からナチスへ

ロシア・東欧・北欧

南欧

反ファシズムの危機―現代イタリアの修正主義

反ファシズムの危機―現代イタリアの修正主義

現在のイタリアにおけるポスト反ファシズム(反ファシズムの危機)と呼ぶべき状況、つまりファシズムの歴史責任と記憶を曖昧にしていこうという歴史観や、それらの論者による「歴史の公的使用」に対する批判の書とのこと。


現代


ユーゴ内戦―政治リーダーと民族主義

ユーゴ内戦―政治リーダーと民族主義

戦争犯罪と法

戦争犯罪と法

に注目。


フランスで、

現代フランスの病理解剖

現代フランスの病理解剖

ポスト帝国―二つの普遍主義の衝突

ポスト帝国―二つの普遍主義の衝突

新自由主義経済とフランスに関しては、
新自由主義と戦後資本主義―欧米における歴史的経験

新自由主義と戦後資本主義―欧米における歴史的経験

が注目。


ロシア・東欧・北欧

暗闘―スターリン、トルーマンと日本降伏

暗闘―スターリン、トルーマンと日本降伏

英語で2005年に出版されたもの。ロシア、日本、アメリカ三国の公開・未公開史料を比較照合しながら読み込んで分析しているのみならず、各国の政治文化など内政史上の問題の議論も有機的に組み込んで総合的な叙述へと結晶化している点が卓越しているとのこと。真にインターナショナル・ヒストリーの傑作と絶賛。
この著作を評する文がまた示唆的。戦後歴史学の「学知」文化の問題を指摘。
中央ヨーロッパの可能性―揺れ動くその歴史と社会

中央ヨーロッパの可能性―揺れ動くその歴史と社会


アメリ
アメリは最近出版物が活況した感があります。

原典アメリカ史〈第1巻〉植民地時代 (1950年)

原典アメリカ史〈第1巻〉植民地時代 (1950年)

の『原典 アメリカ史』のシリーズやの『アメリカ研究の越境』といったシリーズが出始めています。

アメリカにおける国民意識の形成や「国民化」の問題を、人種・エスニシティジェンダーを切り口にして逆照射しようとする論集。

アメリカ・キリスト教史―理念によって建てられた国の軌跡

アメリカ・キリスト教史―理念によって建てられた国の軌跡

植民地時代アメリカの宗教思想―ピューリタニズムと大西洋世界

植民地時代アメリカの宗教思想―ピューリタニズムと大西洋世界

は、ペリー・ミラー以後の宗教史研究の成果を摂取しつつ、北アメリカでの初期ピューリタニズムの展開を大西洋世界との関連で論述。

歴史のなかの政教分離―英米におけるその起源と展開

歴史のなかの政教分離―英米におけるその起源と展開

は、政教分離の問題を英米史の文脈で再検討しようする共同研究。


アメリカ建国とイロコイ民主制

アメリカ建国とイロコイ民主制

先住民の部族連合形態と彼らの思想がアメリカ建国の理念と民主主義の発展に大きく貢献したと主張して米国歴史学界で物議をかもした話題の書物。どうなんでしょう。

アメリカにおける白人意識の構築 (明石ライブラリー)

アメリカにおける白人意識の構築 (明石ライブラリー)

ラテン・アメリでは単著としては特に興味をもったのはありませんでした。


まあ、ざっとこんなもんでしょうか。