『魔術の帝国』
これまたお手伝いの一環として読む。
魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界〈上〉 (ちくま学芸文庫)
- 作者: ロバート・J.W.エヴァンズ,Robert John Weston Evans,中野春夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界〈下〉 (ちくま学芸文庫)
- 作者: ロバート・J.W.エヴァンズ,平井浩,Robert John Weston Evans,中野春夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/01
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ルドルフ2世研究の白眉とされた名著。
ほんとこれを文庫化してくれたことは慶賀すべき事件でした。
「オカルト」皇帝なんぞと『ムー』界隈(ちなみに『ムー』熱烈愛読者を「ムー民」と呼ぶそうな)では紹介される、かなりルドルフにとっては不本意な知名度を日本では誇っていたかと記憶しております。
これを読んで、中欧の面白さに目覚めてしまうくらい素晴らしい。
「魔都プラハ」ってやつですよ。
ボヘミアという磁場、ハプスブルクという血、宗教に引き裂かれ、騒乱の時代と人文主義、マニエリスム、魔術的宇宙観。
ざっとキーワードを挙げればこんなところでしょうか。
まずもって、普遍主義、協調主義、汎知志向がルドルフに限らず、多くの政治・文化エリートたちが抱いていた基本思想であり、ルドルフとその宮廷こそが、最もよくその特徴を表しているということ。それが、この時代にハプスブルクであること、ボヘミアの国際的・地域的・ハプスブルク家的意義、そしてこの時代の政治・宗教といった文脈に、上のキーワードとなる情報を巧みに織り交ぜながら、解き明かしていき、最後は『宗教と魔術の衰退』ハプスブルク・ヴァージョンへと向かうと言えばいいのでしょうか。
個人的にすっかり抜け落ちていたのが、スペインとオーストリアが文化的に極めて近いということ。
そして、中世末期から、このスペインという存在がえらい面白いということに今頃気づいてしまいました。
久しぶりに16−17世紀の良質の作品を読んでいますが、今読み返すと、かなりヒント盛りだくさんで、自分にとっても相当勉強になります。
やっぱり射程はこの辺まで持ってこないといかんね。