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ノヴァーリス:『青い花』


青い花 (岩波文庫)

青い花 (岩波文庫)

いわずもがなのドイツ・ロマン派詩人ノヴァーリス (Novalis, 1772-1801) によるロマンな小説。
原題は Heinrich von Ofterdingen 。


1206年、テューリンゲン方伯の宮廷で開かれた「ヴァルトブルクの歌合戦」において、ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデやヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ(←いずれも当時の超メジャー詩人)が方伯ヘルマンを讃えたのに対してハインリヒ・フォン・オフターディンゲンはオーストリア公レオポルトを讃えたという話から題材を取った作。


青い花」とは、青年ハインリヒが夢の中で見た美しい花。その花の中に美しい少女の顔を見る。これが後に彼が恋する女性、詩人クリングゾールの娘マティルダだったと彼は解釈する。


意外に結構ツボでした。
もちろん主人公ハイリンヒに共感持てたわけでは全然なく、特に夢の描写とか、地下世界・鉱物論的議論、そしてこの作品のテーマである詩(学)の記述がかなり興味深かった。


設定は一応中世、テューリンゲン方伯のもとで開かれたヴァルトブルクの歌合戦を題材にしてるわけで。もろに妹弟子の研究ゾーンっすな。けれども歌合戦そのものは扱っていない。なんせ前半部分だけの未完の作品っすからな。


架空の中世なもんで、ルネサンスの魔術思想からの発想もふんだんに入ってる。


んで、至高のものとの合一を目指して上昇していこうとするモチーフ。


悟性と感情とか肉体と精神の対比というのはわりとどーでもいい。


十字軍、オリエント、夢、自然、地下世界、隠者、そして詩人と女神。
詩論と愛。
古代と中世があるべき黄金時代。

とくに歴史(聖書)と詩の対比の所が興味深い。
あと自然の読み取り方とか。


まあ、精神で統制をとるロマン主義というか。
全編物語形式の詩論とでも言うのか。


しかし訳注が所々首を傾げてしまう。
フリードリヒ2世は十字軍でエルサレムを別に攻略はしてません。
フリードリヒ3世がバルバロッサとハインリヒ6世に付き従って十字軍に行ったっていう史実も初耳です。
ソース何なんでしょうか?