SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

博士の学位


かっちんさん高尾さんの所で取り上げられていたので、遅ればせながらこちらもちょっと便乗。
というか、単にトラックバックをやって見たかっただけだったりして。

課程博士論文を出す条件として、ウチの学科だと、最低論文3本(内1本はメジャー系雑誌)、学会報告(西洋史学会が望ましいらしい)、海外留学があげられています。

でもこれは他大学と比べてかなりヌルイ規定です。

普通はメジャー雑誌に最低3本掲載がノルマです(大抵は『史学雑誌』『西洋史学』『歴史学研究』)
大学によっては海外の学会で報告、あるいは欧文雑誌に掲載、欧米の大学で学位取得(マスターとか DEA とか)などが要求されます。

というか、はっきり言って、海外で博士を取らないと日本ですら就職できなくなりつつあります。


東大がどんどん欧米で学位を取って帰ってきてますから。
私大なんて海外で学位取らないと学振(研究者への奨学金)すら貰えない状況です。
東大・京大は学振簡単に貰えるんですけどね。

当然のことながら、日本で西洋中世史を学ぶというのは色々ハンデがあります。
辞典・事典・目録・基本史料集・基本欧文雑誌など、研究に当たってまず必要不可欠な道具類を完備している大学がほとんど無い。
そして、古文書学・史料論など、中世史研究者としての基本スキルを教えられる人材がいない(古文書読める人は多いですが専門家ではない)。
こうしたことが重なり、、学部から博士課程に至るまでのしっかりした研究者育成プログラムというものが不十分。

教授陣でも欧米で学位を取り、あっちの研究者と対等に渡りあえる人材も極僅かですから、学生の育成方法の質もかなりばらつきができてしまう。

真に優秀な人が自力で何とかやっているのが現状といった方がいいでしょう。
だって、本当の中世史研究者養成トレーニングを知っている人が少ししかいないんですから。

そうしたなかで、少子化による大学ポストへの就職難、それによって上がる就職のハードル(親方作品を作らないと認められない)。
これからは学力低下が重なるし、その一方で、裕福で教育を真剣に考えている親は、子供を欧米の大学に入学させる傾向が増えていく。

ますます知の低下が加速していく。


The Gallery 〜を「ギャラリーさんは」とか、板書やレジュメが無いと勉強できないとか言う東大生が現に出て来ていますし、
その一方で、欧米の大学で卒論を出し、そのままあちらの院へ進む人、あるいは奇怪なことに院は日本で学ぶ人と、
知のレヴェルの両極化傾向が徐々に現われてきています。


話は少し逸れましたが、西洋中世史でこれから研究者になりたいと思う奇特な人は、修士をでたら即留学、そしてそっちで博士の学位を取ることを目指して学部時代からの人生設計することをお勧めします。

僕も修士取ったらとっととフランスに完全移籍すれば良かったと思っています。

いずれ欧米の連中と対等にやりあわなきゃならないんだったら、道具もプログラムも乏しい日本にいるよりも、早いうちからそれら全てが揃っている欧米の大学院に行ったほうが近道ですからね。

しかも、あっちは東京と比べて学生への金銭的優遇措置が恵まれていますからね。
家賃は安いし(フランスの地方だと3〜5万くらい。しかも住宅補助費も付けられる。)、学費も安い(院だと4〜6万くらい)。



ちなみに、今僕が主催している読書会には、小学校からアメリカで育ち、途中オランダを挟み、大学はシカゴ大を出て、
なぜか院は日本で、この前修論出したばかりの女の子がいます。

日本語話す方が苦手らしく(関西弁)、日本がまさに外国なんだとか。
ですからまだちょっとシャイな感じ。

日本に戻ってくる所がちょっと変わっていますが、これからこういう子が増えていくように思います。