『史学雑誌』:回顧と展望
毎年おなじみ。
というわけで2008年を振り返る。
今時間が無いので気が向いたら全体に関してちらほらと。
とりあえず真っ先に気になった点。
ヨーロッパ中世の某地域の某欧語論文について。
当該論文の評がどう考えても一昨年(たしかそれくらい)の別の欧後論文の内容に思えてならないのですが。
つまり、当該論文の内容と評が一致していないと思うんですよね。
評者のうっかりなのか、故意なのか(そんなことあるはずないと思いますが)、それとも僕の外国語論文読解がおかしいのかはわかりません。
最初ここを読んだ時の印象「えっ?そんな内容だったっけ?」と。
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への言及が、内容が中世史に限定されていないからかも知れませんが、
中世の欄で言及されず、歴史理論の欄でのみ(たしか)言及されるのを見て、
中世史も遠くへ来たもんだなとしみじみしたり。
さて、いくつか目に付いたコメントを拾ってみる。
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総説
- 国立大法人化後最初の中期目標(6年間。実質2〜3年で目に見える成果を出すこと)達成評価結果が公表され、この成績が2010年以降の運営交付金の額に跳ね返ると。落第点とって予算削られると困るんで、そうならないよう各研究機関が競争させられるわけですが、結果、歴史研究のあり方も変化してきたと。それが比較的短期に成果があらわれるプロジェクト研究へのシフトとそれに伴う出版物のラッシュ。
- 科研費などについて。暫定的に成果が纏められても、それが研究組織・個々の研究者によって継続・継承され、学問の真の発展に結果するかは未知数。
これはそうでしょうね。
海外でも一発企画みたいな論文集アホみたいに出てますしね。
あれらも今後彼らが研究を深めていくのかと思うとたぶん違うでしょう。
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歴史理論
フィールドヒストリーってことばがあるの知りませんでした。
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〈日本〉
(考古)
- 論考数100、約70の講演会・研究会、約30の展覧会←それに比べて西洋中世…
(古代)
- 2008年だけで、700点を超える著書・論文の公刊←それに比べて(以下略)…
- ただし、シンポジウムの要旨をほぼ丸写しで雑誌掲載したようなものなど、明らかに業績の水増し狙いも目に付いたと。
古代史に限らず、こういうこと起きるでしょうねぇ。
- 研究書の高額化の問題。高価格・少部数悪循環では研究自体の先細りと蛸壺化が急速に進むと懸念。
科研費の報告書の増加もそうだけど、研究がますます密儀宗教チックになっていく印象はあります。
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〈中国〉
中国 現代
- 若手に力作多いのに、ベテラン・中堅が若手の研究を先行研究に取り上げていないものが散見とのこと。
これってどうなんでしょ。
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〈内陸アジア〉
展望
- 学部生の東洋史離れ、院生・若手の苦境、これに起因する後継者不足の懸念が声高に叫ばれる昨今らしい。
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〈西アジア〉
(近現代)
もう、ポスト・イスラーム主義なるものが出てきているのか。
知らなかった。