SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

『ベーオウルフ』


ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩 (岩波文庫)

ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩 (岩波文庫)

8世紀末‐9世紀初頭に成立とのこと。
ちなみに古英語では「ベーオウルフ」と伸ばすそうで。


怪物グレンデルに宮殿を襲われて苦しんでいるデネ(デンマーク)の王フロースガールの噂を聞いて、怪物退治のためにはるばる海を越えてやってきたイェーアト族(スウェーデン南部)の勇者ベーオウルフの闘いを綴る英雄叙事詩


2部構成で、前半は怪物グレンデル退治とその母親との水中での一騎打ち。
後半はイェーアトに帰郷し、ベーオウルフはヒイェラーク王の跡を継いで王になる。
治世50年後、宝の番をしていた竜を怒らせた者のせいで、竜退治に赴き、死闘の果て竜を倒すも自身も致命傷で死ぬ、というお話。


はっきり言ってキリスト教的要素見当たらない。
世界観はほぼエッダでしょう。


海の描写が結構巧み。
人物・内面描写は例によって大雑把。
中世の叙事詩なんで、あまり読んでいて楽しいというものではない。


数字に何か意味があるのかとか、一騎打ちへのこだわりとか、鎖帷子って大事なんだねとか、剣と盾の意味とか、つらつら面白そうな所はある。


ベーオウルフって16世紀に発見されたただ一つの写本によって伝来してるってのが面白い。しかも12世紀と10世紀の写本を合本したものだそうな。
で、後半の10世紀写本に収められている物語群の一つにベーオウルフが入っているとか。


しかしね、フロースガール王が、グレンデルの怒りそうな所に宮殿建てて夜にドンちゃん騒ぎするのが元凶なような気がするんだが。