ピーター・ブラウン:『古代末期の形成』
- 作者: ピーターブラウン,Peter Brown,足立広明
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: ハードカバー
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「古代末期」研究のマニフェストとも言える記念碑的著作。
原著は1978年ですよ。
元は1976年にハーヴァードで行った講演。
第1章の「聖性に関する議論」が個人的にヒット。
ブラウンは、未踏査の史料を駆使して何かを議論するのではなく、研究者にはおなじみの史料を使って従来とは異なる視点を提示するんですよね。
古代史ってそうそう新史料が発見されるわけでもないでしょうし、そりゃそうなのかもしれませんが、こんなに見方が違うものかと驚いてしまう。
3世紀以後をローマの「衰退・没落」と見るギボンやモムゼンによる伝統的見方に対して真っ向勝負して、見事に「勝利」。
「メロドラマ的」と言って通説を一蹴するところも素敵。
まあ、一蹴される方の説、つまり「3世紀危機」と称してこの時代を「不幸と神秘主義は一心同体」とか「かくも知的に貧困化し、物質的に不安定で、恐怖と嫌悪に満ちた3世紀のような世界から」などと言いたくなるのもわかるんですけどね。
とは言うものの「衰退・没落」イメージって喧嘩売りたくなりますよねw
「繁栄・絶頂期」っていうイメージにもですけど。