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ダンテ・クラブ


寝る前にちまちまと。
ようやく読み終わった。


ダンテ・クラブ

ダンテ・クラブ


南北戦争直後のボストン。
ダンテの『神曲』「地獄篇」になぞらえた連続殺人事件。
本格英訳を試みるハーヴァード大を中心とするインテリ集団が謎に挑むと書いたら、いかにもつまらない話に思われてしまうか。


当時の東海岸の上流がほんとイヤミったらしくて、よく描かれていますな。
たぶん、今もさほど大差ないんでしょうね。こういう連中って。

ハーヴァードの「護教(アングロ・サクソンプロテスタント)」っぷり、アメリカの文化的「後進」コンプレックスとか。
ダンテをアメリカに紹介することが、当時相当ショッキングなことだったということは伝わった。
あと南北戦争の「傷」とか。
登場人物の大半は実在の人。
しかし、出てくる主要キャラのどれも全然共感もてなかった(大抵もてないけど)。


戦争体験のショック(というかこれシェル・ショックだよね)の描写とか初の黒人警官とか、随所に近年の歴史研究の成果を盛り込んでいるのはほほうと思った。


作者はハーヴァードの英米文学科を主席で卒業したダンテ研究の新鋭とのこと。
?ダンテならイタリア文学科とかなのかと思うけど、そういう学科がないのか、アメリカへの受容が専門だからなのかは不明。
そこまで調べる気なし。
まあ、作家としての才能もあるということはわかりました。


作者のサイト


しかし、ダンテってやはり西欧人にとって物凄いインパクトあるんですね。
これが未だに全然わからん。
神曲』読んでも、ロングフェローやローウェルやホームズ(いずれも登場人物)みたいな捉え方とてもできない。
一応、やってる時代もかぶるし、それなりにダンテの著作を邦訳とはいえ読んではいますが、彼らが受けるような凄さを感じられらない。
いや、『神曲』の世界観とか、その発想は凄いと思うんですよ。
でもなあ。


なので、日本人でダンテを「理解」できる人って改めて感服します。



この小説、映画化するんでしたっけ?
いっそ、『神曲』も映画化すればいいのに。
いまの技術なら、ダンテの想像力に応えられると思うのですが。



関連:ダンテ


現在入手可能な『神曲』の邦訳。

神曲 上 (岩波文庫 赤 701-1)

神曲 上 (岩波文庫 赤 701-1)

神曲 中 (岩波文庫 赤 701-2)

神曲 中 (岩波文庫 赤 701-2)

神曲 下 (岩波文庫 赤 701-3)

神曲 下 (岩波文庫 赤 701-3)



集英社文庫の寿岳訳もある。

神曲 地獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

神曲 地獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

神曲 煉獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

神曲 煉獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

神曲 天国篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

神曲 天国篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)



しかしいずれも読みにくかった。
たしか河出だったかちくまだったかの訳が昔あったと思ったけど、今のところそれが一番読みやすいとか言われてたはず。
現在、岩波の「図書」で河島英昭氏による新訳が進行中。



ぱっと思いついた範囲でのダンテ研究書。

世俗詩人ダンテ

世俗詩人ダンテ

ダンテ『神曲』講義 改訂普及版

ダンテ『神曲』講義 改訂普及版

ダンテ (文庫クセジュ)

ダンテ (文庫クセジュ)



漫画は永井豪

ダンテ神曲 (上) (講談社漫画文庫)

ダンテ神曲 (上) (講談社漫画文庫)

ダンテ神曲 (下) (講談社漫画文庫)

ダンテ神曲 (下) (講談社漫画文庫)

ただ、永井豪版はいくつかある。