『クリュニー修道制の研究』
- 作者: 関口武彦
- 出版社/メーカー: 南窓社
- 発売日: 2005/02/15
- メディア: 単行本
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ゲットと同時に読む。
氏のこれまでのクリュニー研究を纏めたものなので、実はかなりの部分読んであった。
特に大幅な加筆も無いし。
思えば、卒論で氏の研究をほとんど読み漁り、改革教皇権の問題やクリュニー研究には多いに刺激を受けたものでした。
関口‐野口論争というのも、野次馬的面白ささえありました。
とにかく舌鋒鋭い。というか見も蓋もないくらいストレートにやっつける。
思い切ってんなーと。
で、本書でも最後の後書きで、日本の教会史研究者に手厳しい一言を述べて、なお関口節健在を見せてくれました。
全くその通りで、かなりの教会史研究者がいるにもかかわらず、この11−12世紀のクリュニー研究者は少なく、ゴルズなどのロタリンギアの改革修道院研究も、南仏の改革修道院研究も出てないのは欧米の学会ではありえないことです。
研究者の大半がクリスチャンで、護教的な内輪だけの研究に終始してしまい、権力関係とか、社会関係などといった視点を全く捨象してまうがごときものが多いというのも、よくぞ言ってくれましたと。
個人的にさらに言ってしまえば、13世紀以降の托鉢修道会研究の層の薄さももの凄く気になっているところ。
とはいいながら、氏の研究にも問題がある。
いかにクリュニーが在地の領主たちや王権・司教権・教皇権たちの支持を取り付けていったかというのは頷ける。彼らの「不安」を掬い取ったのがクリュニーというのもそうなのだろう。
では、どのようにして、彼らクリュニーは、具体的に「安心」を提供したのか。寄進行為の側面での具体は見えてきた。対価となるサーヴィスの具体はどうだったのか?ここまでの像は描けていなかったように思われる。
これからはココを掘り下げていくことが課題なんでしょう。