SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

小説も読了

最近逃避で読んでたもの。


ペルシアの彼方へ〈上〉―千年医師物語1 (角川文庫)

ペルシアの彼方へ〈上〉―千年医師物語1 (角川文庫)

ペルシアの彼方へ〈下〉―千年医師物語1 (角川文庫)

ペルシアの彼方へ〈下〉―千年医師物語1 (角川文庫)


大作だけど、一気に読んでしまった。


11世紀、ロンドンで孤児となった少年が外科医兼理髪師と出会い、その道に進むが、師の死後、内科医のユダヤ人に出会うことで、本格的な医学の道に進むことを志す。当代最高医師、イブン=シーナーに師事するため、はるばるペルシア、イスファハンまで旅をし、そこで医学を学び、人間的にも成長して再びイングランドに戻っていく。


まず設定がいい。かなり入念に調べてある。
当時のイングランドの政治状況、ロンドンの汚さっぷり、芸人でもあった外科医兼理髪師という職業の生活。11世紀のヨーロッパでまともな医学を学べる所はまだごく僅かで、やはりイスラム世界にはかなわない。目下イスラムから知を輸入し始める時期だったし。それに異教徒から学問を学ぶことは禁じられている。そこで、主人公はコンスタンティノープルからユダヤ人として偽って旅をし、イスファハンまで行き、どうにかイブン=シーナーのもとで学べるようになる。


この長大な旅の生活やイスファハンの描写、シャーとその宮廷世界、ユダヤ教徒ムスリムの世界、マドラサでのトレーニング、そして戦争の描写とどれもかなりしっかりと調べられていて、そこにうまくフィクションがちりばめられている。


知識として知っていることでも、ここまイメージを作り上げて、なおかつこれほど長編にして、しかも全然ダレさせないというのはいいじゃないですか。


大分前に同僚に進められて買ったものの長らく積読状態にしていたんですが、いやー、読んでよかったです。
ここ最近、中世の医学にも関心があったので、出会っといてよかった。


ちなみにこのシリーズ3部作になっているらしく、2部は近代アメリカ、3部は現代になるのかな?
まさに大河作品。
ぼくは1部でお腹一杯ですけどね。