『「新約聖書」の誕生』
- 作者: 加藤隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昨日購入したブツ。
やはりこの人の文章はくどくてキライ。
この本は前に読んだ本『福音書=四つの物語』(講談社選書メチエ、2004年)の前作にあたる。
新約聖書の成立背景をかなり踏み込んで推論した研究。
異端マルキオンの存在が、27文書からなる「新約聖書」=「正典」という存在の成立に大きく関与していることはわかる。
それと、なぜギリシャ語で書かれたか、イエスがなぜテクストを残さなかったのか、使徒たちもなぜ書かなかったのか、なぜ、4世紀も終わりに近づいてからようやく「正典」化したのか、などの説明はなるほどとは思った。
が、個人的に、この27文書から漏れたもの、つまり、「外典」などにされてしまったテクストたちが、その後どうなっていったのかということに関心があったので、その辺の説明が全く無かったことが少しもの足りなかった。予想してたけど。
外典って、全くその後伝わって行かなかったのだろうか。気になる。
それと、4世紀に「正典」化するこの聖書、なぜ、西ローマ、それもアフリカで起きるのかという説明もないような気がした。
とはいえ、かなりいい概説。古代史の研究としても有益。
なかなか日本では古代キリスト教史研究というか、帝政ローマ・キリスト教史研究というか(こんな言い方無いと思うが)、古代末期キリスト教史研究というものの良質の概説が少ないので、こういう研究がもっと増えてくれるとありがたい。もちろん護教的でないやつが。