リナ・ボルツォーニ『記憶の部屋』
というわけで、読了。
- 作者: リナボルツォーニ,Lina Bolzoni,足達薫,伊藤博明
- 出版社/メーカー: ありな書房
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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何分、中世やっているからでしょうか、どちらかというとやっぱりカラザースの方が面白く読めてしまうんですよね。
観点が違うからかもしれません。
16世紀、イタリアをメインの舞台に、当時の「平均的知」である記憶術とは、言葉とイメージを供給・解体・再結合させる変容の技芸であり、知と文化を包括する巨大な機構(からくり)として席巻した「術」たることを厖大なテクストを丹念に読み込んで活写した書。
秘文字とか、修辞学との絡みとか、蒐集文化との関係、空間構成への影響とか、面白いテーマが盛りだくさんです。
色々気になった点があるのですが、とりあえず一つだけ。
たとえば本書では、カトリック側の記憶術書が説教術との関連で紹介されているのですが、この場合、当時の他の説教支援書物群との関係はどういう風になっていたのか、など気になります。
それにですね、中世の範例説教集や例話集などが活字化されるのがまさにこの16世紀ですよね。無論、背景に宗教改革への対抗という意図があるわけですが。
そして、これら説教支援書物を活字化した連中や、これら活字化されたテクストを献呈する相手っていうのは、ボルツォーニやフィンドレンの話で出てくるような人物だったりします。こうした「中世」テクストのインキュナブラも16世紀の知の文化に置くとどういったものになるのか興味があります。