SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

『金と香辛料』


読了本の山からてきとーに取り出してみたり。


金と香辛料―中世における実業家の誕生

金と香辛料―中世における実業家の誕生


原著はこれ。Favier , Jean . , De l’or et de épices : Naissance de l’homme d’affaires au Moyen Âge (Paris , 1987) .


なんだこの値段の差は。10ユーロ=6000円って、いったいどういうことなんでしょうか?


ファヴィエと言えば、中世史学の碩学であり、中世末期、百年戦争やフランス王家研究の泰斗、国制史の重鎮みたいな程度でしか、僕なんぞはイメージしていたんですが。あと古文書学というか文書館学?ですか。


そのファヴィエによる中世商業史概説。
タイトルの『金と香辛料』って、別に読んでいても特にフューチャーしたわけではないということに気づきます。


商業・商業活動が、「金融」、そして「実業」へと向かっていくということを示すのが大まかなラインかと。
史料残存状況の関係からかもしれませんが、時代でいうと中世末期、地域では、イタリア、フランス、ドイツに分量が割かれています。
かなり詳しく、情報盛りだくさん。自分がこの領域に疎いせいかもしれませんが。


個人的には、商人メンタリティへの関心から読みました。とはいえ、その点ではあまり僕の知りたい情報は入っていませんでした。


中世商業史概説として押えるにはけっこうなことだとは思います。
ただ、訳語にいくつか不統一なところがあったりするので、ちょっと混乱する可能性も。さらに言えば、訳文もちと読みづらい箇所がいくつか。
そして一番ひっかかるのは、原著自体の問題かもしれませんが、注や参考文献がないということです(邦語はついている)。
せめて、引用史料の出典くらいは明示して欲しかったです。
まあ、フランスの書籍で、注や索引、参考文献なしのものってわりとありますからね。知りたいやつは自力でなんとかしろということなんでしょうか。


さらに、上にも書きましたが、何がひっかかるって、そのお値段。
確かに、概説としてはかなり充実しているとはいえ、お高いですよ。


中世の商人・商業について、がっつり知りたいと思う人にはお薦め。



追記

なんだか、ファヴィエ本をヒントにしたこんな本が評判なんだとか。

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (2) (電撃文庫)

狼と香辛料 (2) (電撃文庫)

へぇ〜。
もしかして、こっちから入った方が良かったりして。