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SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

読了:『聖なる暗号』


聖なる暗号 (ハヤカワ文庫NV)

聖なる暗号 (ハヤカワ文庫NV)


始まりはイギリスのリンカーン、しがない古書・古地図屋が主人公。
ことの始まりは、地元貴族から解読を頼まれた一枚の手記。
それは、16世紀、スコットランド出身の少年が、ひょんなことから乗り込むことになった、大西洋航海で起きた一連の殺人事件の顛末を暗号で書いた、未発見の手記だった。


その手記をめぐって、依頼人の地元有力貴族が殺され、主人公にも迫る追っ手をかわしながら、手記の謎を解き、舞台はイギリスからカリブ海へと向かっていく、というのが大まかな流れ。


現代と16世紀の殺人がからまりながら展開していく歴史ミステリー。


で、問題の手記を残した少年は、エリザベス1世の時代の1585年に出向した船にクルーとして乗り込むことになって、その船内で殺人事件が次々起こっていく。
その背後にはスコットランド女王メアリ=カトリック=スペインvsエリザベス=プロテスタントの構図が、この航海と深く関わっていると。


あんまり書くとネタバレになってしまうので、多くは書けませんが、キーワードをちらほら言ってしまうならば、ロアノーク島植民地計画、ジョン・ディーの暦、「神の経度」、プロテスタントカトリックの「時」をめぐる争い、ギリシア正教、テロリスト、北極星、ざっとこんな所でしょうか。


著者が天文学者のせいか、最後の謎を解く鍵は、天空の星にあったりする。


最後の展開が、自分的には意外。自分の「テロリスト」イメージがメディアに毒されているのかなとも思う。
いや、でも面白かった。


著者はスコットランド生まれの天文学者
現在はアイルランド在住。天文学の研究で著作をものした後に小説デビュー。


学者がミステリー作家って、結構憧れ。
いいなぁ、文才。


ちなみに、本書についてはクイズ形式のサイトあり。http://www.splinteredicon.com/