SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

 『下流社会』

発表準備の合間にちまちま読んでいたものの中から。


下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)



下流度チェック」

この内半分以上当てはまればあなたは「下流」なんだとか。



  1. 年収が年齢の10倍未満
  2. その日その日を気楽に生きたいと思う
  3. 自分らしく生きるのがよいと思う
  4. 好きなことだけして生きたい
  5. 面倒くさがり、だらしない、出不精
  6. 一人でいるのが好きだ
  7. 地味で目立たない性格だ
  8. ファッションは自分流である
  9. 食べることが面倒くさいと思うことがある
  10. お菓子やファーストフードをよく食べる
  11. 一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごすことがよくある
  12. 未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上の方)


ワタクシは見事に下流


消費文化の傾向などから探る(というか意識調査なんだけど)。
著者は元パルコのマーケティング誌『アクロス』編集長。消費文化などを研究するシンクタンク「カルチャースタディーズ研究所」の設立者。


僕は、両親が1947年と見事に「団塊世代」(本書では1947〜51年生まれ)で、「団塊ジュニア世代」(1970〜74年生まれ。)に属していますので(1974年生まれ)、この本のターゲットそのものに相成るわけです。というか、出生数の50%以上が団塊世代の子供を「真性団塊ジュニア」(1973〜80年生まれ)と括っていますので、むしろ真性団塊ジュニアなわけです。


ちなみに、1960〜68年生まれを筆者は「新人類世代」(高度経済成長期生まれ、でもこの場合1955〜73年とするらしい)、1926〜34年生まれの「昭和ヒトケタ世代」を他にカテゴライズしています。

ついでに言うと、この作者はどのカテゴリーにも入っていませんな。
あえて言うと高度経済成長期、でも「新人類」よりは上の世代。


しかし本書のメインは「団塊ジュニア世代」。


さらに収入、学歴、消費文化、親の年収、学歴、階層もからめて、男女それぞれをカテゴライズします。

女性だとお嫁系、ミリオネーゼ系、かまやつ女系、ギャル系、普通のOL系

お嫁系は富裕専業主婦志向、両親も富裕層か中産階級、自身は有名女子大などを出て、親のコネで有力企業に就職か、家事手伝いしながら昼は優雅にお母さんとお買い物や料理をする。消費面では、車、ファッションなどすべての面で高級志向が強く、階層維持のためのお受験、英語教育なども熱心。

ミリオネーゼ系は、高学歴、高職歴、高所得で、医師、弁護士、税理士や、「先生」と呼ばれる職業の女性。性格は上昇志向、頑張り志向、自己啓発志向が強い。帰国子女・留学経験も多い。目黒、世田谷、杉並など東京西南部の裕福な家庭出身者で、親も「先生」とか「士族」であることもしばしば。消費はブランド志向、グルメ志向が強く、ファッション費年100万以上がザラ。銀座、青山当たり前、四谷荒木町、人形町門前仲町あたりのしぶい小料理屋にも出没。エステや海外旅行なども。専業主婦志向なんだけど、仕事ができちゃったものでこうなった女性も多いだとか。大抵夫も同カテゴリー系らしい。仕事も家事も子育ても颯爽とこなすタイプらしい。

ちなみに、今東京で一番美人が多いのは銀座でも青山でもましてや渋谷でもなく(渋谷は下流が行く所なんだそうな)、日本橋二子玉川なんだそうだ。日本橋は金融系で働くミリオネーゼ系キャリアウーマン、二子玉川は郄島屋改装以来、客層の高さはその辺の都心の百貨店よりはるかに高いんだそうな。


かまやつ系(こんなネーミング初めて聞いたよ)は、手に職つけて働きたいタイプ。学歴的には専門学校が多く、美容師、菓子職人やデザイナー、ミュージシャンなどのアーティスト系職種を目指す傾向。手に職志向といっても大きな向上心、上昇志向なく、自分らしい仕事(←この「自分らしい」が下流たる所以らしい)を求める。人生に対する計画性、具体的将来展望が弱い。消費は郊外駅ビル、古着屋、音楽、イラストマンガなどのサブカル好き(←これが「サブカル」っていうのはどうなの?)。結婚して子供は欲しいが専業主婦志向はない。


ギャル系は、渋谷109やセンター街のギャルをイメージしているみたい。で、こういう女性は外見のけばけばしさとは裏腹に専業主婦志向が非常に強い。22,3歳で結婚して子供2,3人欲しいとか言うらしい。実際にはこういう女性もいるが、大抵「できちゃった婚」で、夫の経済力なくフリーター夫婦がしばしば。学歴は高卒、ないし中退、専門学校がメイン。かなりがフリーター。親はブルーカラー層が多い。早婚、専業主婦、子持ち志向だが人生に対する計画性、将来予測能力が弱い。大都市圏郊外、地方郊外在住。消費は大型スーパー、安売り店でブランド購入、ガスト、サイゼリアなどの低価格ファミレスを愛用。


で、いずれにも分類できない多くの女性を普通のOL系としている。専業主婦志向なんだけど裕福な男性の争奪戦に敗れ未婚、かといってミリオネーゼほど仕事に生きがいも意欲も能力もなく、ギャルよりはそこそこ知性も学歴も高く、アーチストになれるほどの美的センスも自己表現欲もない。でも手に職系やサブカル職にも関心があるので、自由な時間を増やすために派遣社員なったり「ケイコとマナブ」を読んでフラワー教室やアロマテラピーやらに通っては自分探しと癒しとプチ自己表現に明け暮れている。でもそれを仕事にするところまではいかず、ふと我に返って、簿記などの資格でも取ろうかなどと思ったりするけど、そんなの取ったら余計結婚が遠のくかしらとも思っているタイプらしい。


言っときますけど、これ僕の言葉ではないですよ、この通りに書いてあるんですよ。


で、この5類型で女性間格差が拡大していると指摘していると。



さて、男性だと、ヤングエグゼクティヴ系、ロハス系、SPA!系、フリーター系に分類されます。

ヤングエグゼクティヴ系は、高所得志向、出世志向強い従来型のビジネスマン。高学歴、性格もポジティヴ、結婚、家族形成も当然と「まったく迷いがない」タイプ。一流企業志向、商社、金融、ITに多い、消費も財テク、住宅、外車好き。でも自分自身の独自の個性的な価値観はなく、あくまでも人がよいと思い、欲しいと思うものをいち早く手に入れることに喜びを感じるタイプ。よって六本木ヒルズ好き、BMW、ロレックスなど「わかりやすいステイタス」が好き。文化的趣味志向は弱く、どちらかというと体育会系。ゴルフとテニスが好きなタイプ。新人類世代に出てくる集団らしい。要するにこの世代の価値観を良しとする後続世代ということか。


ロハス系は、スローライフ志向、高学歴、高所得だけど出世志向が弱い。マイペース、自分の好きな仕事をしていきたいと考えるタイプなんだけど、嫌な仕事もそつなくこなす能力も高い。ヤングエグゼクティヴ系を教養がなく暑苦しい奴だと内心軽蔑している(らしい)。趣味の時間欲しいけど、忙しいので雑誌で代償。「ソトコト」「サライ」愛読。共働き傾向。消費は有名高級ブランドに関心弱いが、「ひとひねりしたそこそこのもの」を買うのが「自分らしい」かなと思っている。外車は好きだけど、ベンツやBMWではなく、ジャガープジョーが良いと思っているタイプ。知性と上品さが重要で、品質、製造方法、伝統、文化などについて薀蓄があるものを好む。古本、骨董、古民家などの古めかしいアナログ趣味の世界に浸るのも好き。江東区東雲に住宅応募するタイプ。


SPA!系は、雑誌「SPA!」の主要読者層と思われる「中」から「下」にかけてのホワイトカラー系男性。特に勤勉でもないし能力もないけどフリーターになるタイプでもなく、仕事するしかないので仕事しているタイプ。ブランド志向は強くないけど、オメガなどはディスカウント店で購入。でもスーツはスーツカンパニーでもユニクロでもいい。あまり高級好きではないけどサブカル好き。オタクと言われない程度にオタク趣味。ガンダムが一般常識。異常でない程度にロリコン、格闘技系趣味あり。ギャンブルも好き。風俗に金をつぎ込む者も多い。ロハス系みたいに自分の時間欲しいんだけど仕事の要領悪いので残業多い。いずれ結婚して親と別に家を買うだろうと「ぼんやり」と人生を計画し、貯金もそれなりにしているが、それがいつになるか決め手はなし。「週刊プレイボーイ」に出てくるグラビアアイドルみたいな女の子が突然目の前に現われて結婚できないものか妄想する日々が続く。


フリーター系は、自分らしく生きたい、好きなことをしたい、本当にやりたいことをやりたいなどと言って、正社員になることを拒んでいるうちに30歳になり、それでも自分らしさも好きな仕事も本当にやりたいこともみつからず、急に焦っているタイプ。



…念のため言っておきますが、これも僕の言葉ではないですよ。こう書いてあるんです。


なんていうか、男女共に、身も蓋もないというカテゴライズをされているわけですよ。


で、この後、団塊ジュニア世代の下流化が進むと、色々な消費・収入・雇用状況などのデータを使って述べ、この世代の「上」と「下」の二極化(実際の面でも意識の面でも)が、少子化加速の一つの目安にもなっていると。


「へー」と思ったのは、年収500万が結婚できるかの「壁」で、1000万超えると100%結婚するらしい。
あと、一人暮らしも男女共に「下」程多いとか、年収700万が子供を作るか否かの目安とか、年収400万が女性のリッチ生活の条件だとか言っているのも「へー」と読んでました。


ただ、女性の場合、院に進む女性は家が「上」が多く、大学院というのは裕福な家庭の娘の道楽のようなものらしいと言っているんですが、これは「う〜ん」と首を傾げてしまいました。少なくとも僕の知る界隈では、それほど多くないと思いました。他の専攻はどうか知りませんが。


そして団塊ジュニア世代男性の下流の条件、「3つのP」
パソコン、携帯(Pager)、プレステ。これ3つ揃っている団塊ジュニア男性は「下流」である率高し、なんだそうな。
さらに、ペットボトル、ポテトチップスで5Pでも可なんだとか。

あ、俺、パソコン、携帯持ってるYO!プレステ昔盗まれたYO!夏はペットボトルのお茶飲むYO!ポテチじゃなくって柿P大好きだYO!と、楽しことができました。


つまり、引きこもって一人でいるのが好きな奴は「下」が多いんだそうな。
他者とのコミュニケーション能力欠けているのも彼らの傾向なんだそうな。

で、逆に「上」の男ほど性格が明るく、人の好き嫌いが少なく、人づき合いもよい。気配りもあり、実行力もあり、依存心が弱いんだとか。


う〜ん、確かに、一人でいるの好きだよなぁ。付き合い悪いし。

さらに、この世代の「下」ほど自民党とフジテレビが好きらしい。


そうすると、とりあえず自分は「下流」じゃない!と言いたい人は、この5つのPを持たない、やらない、そんでフジテレビ見ない、自民党支持しない、ついでに渋谷に行かないという所から始めた方がいいということでしょうか



そして女性の「上」は、男性同様明るい、社交性高い、依存度弱など同じで、プラス「女らしい」「品がよい」「セクシー」「礼儀正しい」「エレガント」が付き、「かっこいい」や「てきぱき」「颯爽とした」「賢い」など仕事ができるイメージも多いらしい。
逆に女性の「下」は「のんびり」「地味」などが多いらしい。

あと、朝食を食べないことがある、食事時間が不規則、食べることが面倒くさい、料理が面倒、コンビニで弁当よく買う、食品などをドラッグストアで買う、過食・拒食の経験あり、カップ麺よく食べる、コンビニのデザートの新製品をチェックする、という女性は「下」が多いらしい。

逆に、料理好き、雑誌の料理記事よく読む、食品選ぶ時添加物気にする、野菜たくさん食べるようにしている、栄養のバランスを気にしている、というのは「下」の女性に少ないらしい。


でもこれ男性でもある傾向なのではないかと。


ざっと、こんな感じでこれでもかと団塊ジュニア世代にデータと分析を突きつけるんですね。
データの取り方がどうとか、分析の仕方がどうとか、専門家から言わせるとどうやら色々突付きどころはあるらしいですが。
僕的には、「へー」とか「イタイイタイ!」という語に尽きると言えばいいのでしょうか。

思い当たるフシが一杯ありすぎて、自分が「下」であることを改めて認識させてもらいましたよ。

なんか、この本読んでムキになって怒っている感じの書評をいくつか目にしましたが、これは自分が「イタイ」ことを味わう読み物なのではないかと。M向きの本というか。


しかしね、載せてある写真の使い方はかなり問題あるよ。例えば駅前かどっかの道端で倒れ寝込んでいる男性の写真に、「希望失った若者が街中に倒れこんでいる」なんてコメントつけてあるけど、おいおいって気になります。普通に酔っぱらって寝てるだけなんじゃないのって思うんだけど。



思うに、作者は、結婚して、子供を生んで、平凡に暮らす、一昔前の「中流」生活に戻したいというか、その世界を良しとしているみたいで、別の「中流」のあり方、世界を具体的に描くなり提案しているというわけではないようです(おわりにでいくつか提案していますが)。

で、団塊ジュニア世代に、「自分らしさ」とかグダグダ言ってないで、とりあえず働いて見ようやとか、人生にもっと意欲持てよとケツを叩いていますが、一応、それなりに上の世代にも今の雇用状況まずいってとか苦言を呈してはいます。

でもこの話しを突き詰めると、「意識」「意欲」問題にすり替わりはしませんかね?大丈夫?それとも僕の誤読?



やっぱり、幸福のあり方が全然多様でないっていうのはやはり問題でしょう。


でもね、この本は、基本的に団塊ジュニア世代に向けて書いているんでしょうが、当の世代でこれを読む人はそんなにいないんじゃないでしょうか。
いたとしても、僕みたいな暇人、隠れニートくらいではないでしょうか。
基本的にそれより上の世代が読んで、あーまずいなーとか、可哀想だなーって思って終わりなのでは?


自分はイタイなーっていうのを再確認したい人はお薦め。
あまりに言い当てられて、ムカついたり、全否定したい人にもお薦め。