SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

木粼大輔「例話に見るシトー会修道院の権益と霊性に対する姿勢‐ハイステルバッハのカエサリウスと『奇跡に関する対話』を例に‐」(『論究』vol . 37;1、2005年、45‐72頁)


卒論を纏めたにしてはよくできているけど、活字論文としてはかなり問題あり。
確かに、データの取り方、史料の読み込み方にはかなり努力の跡は認められるけど、
大体、ラテン語読めないのにさも読んだかのように見せるのは、ハッタリの許容範囲を超えていると思う。
誰の入れ知恵か、それとも自分で思いついたのか知らないけど。
知らない人が読んだら、それなにり出来ていると思わせてしまうから、尚更性質が悪い。
それと、中世で「ミドル・クラス」って何だろうね?



重野純子「婦人雑誌「Sibylle」に見る60年代の東ドイツ」(『論究』vol . 37;1、25‐44頁)


個人的にこの論文が一番面白かった。60年代、西ドイツ初の若者向け雑誌、「TWEN」 、東ドイツの女性雑誌 「Sibylle」 、そして日本のこれまた初の若者向け雑誌、「平凡パンチ」の誕生とその社会的・文化的背景を解き明かし、日独「若者文化」の展開とその終焉を追い、それを通して、60年代という時代の意味を問う意欲作。

独文の人らしいけど、なんでこんな雑誌に出したのかなぁ。着眼点もいいし、分析もきちんと出来てる。何よりも自分の言葉で時代や文化を語ろうとしているのがいい。
もっとメジャーな雑誌に出せばよかったのになぁ。もったいない。



川谷弘子「メアリー・ボーデンの『禁じられた地帯』に関する一考察‐アメリカ人看護婦による第一次世界大戦の記録‐」(『論究』vol . 37;1、1‐12頁)


第一次大戦の女性文学に焦点を当てた、序論的一本。

そういえば、第一次大戦文学ってフォークナーやヘミングウェイと男性のばかりで、女性が書いた大戦文学って聞いたこと無かったなと。
女性も戦争に様々な形で動員され、しかも戦地に赴いている人も大勢いるのですから、これはもっと注目していい。
しかも前線で救護活動している女性は、それこそ中・上流階級の女性が多いのだから、物を書いて然るべき条件は揃っている。
また違った視点からの第一次大戦像が見えるだろうし、これはけっこう先が期待できるジャンルかなと。

70年代からこういう研究は行われてきたそうで、日本でもこういう動きがあったのかな?