SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS ANNEX

SCHOLASTICUS LUGDUNENSIS 別館

2020年のサントリー学芸賞受賞作品

本賞は「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分かれ、正賞として楯、副賞として300万円を贈呈します。毎年、前年1月以降に出版された著作物を対象に選考し、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方を顕彰しています。1979年の本賞創設以来、受賞者の数は今年度を含め354名にのぼります。

第42回 サントリー学芸賞


<受賞者および対象作品>
〔政治・経済部門〕

  • 酒井 正(さかい ただし)(法政大学経済学部教授)

『日本のセーフティーネット格差 ―― 労働市場の変容と社会保険』(慶應義塾大学出版会)

『人類と病―― 国際政治から見る感染症と健康格差』(中央公論新社



〔芸術・文学部門〕

  • 李 賢晙(い ひょんじゅん)(小樽商科大学言語センター准教授)

『「東洋」を踊る崔承喜(チェ・スンヒ)』(勉誠出版

「東洋」を踊る崔承喜

「東洋」を踊る崔承喜

  • 作者:賢〓, 李
  • 発売日: 2019/02/28
  • メディア: 単行本


  • 中嶋 泉(なかじま いずみ)(大阪大学大学院文学研究科准教授)

『アンチ・アクション ―― 日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ)

アンチ・アクション―日本戦後絵画と女性画家

アンチ・アクション―日本戦後絵画と女性画家

  • 作者:泉, 中嶋
  • 発売日: 2019/09/01
  • メディア: 単行本



〔社会・風俗部門〕

  • 伊藤 亜紗(いとう あさ)(東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター准教授)

『記憶する体』(春秋社)を中心として

記憶する体

記憶する体


志村 真幸(しむら まさき)(南方熊楠顕彰会理事、慶應義塾大学非常勤講師)
南方熊楠のロンドン ―― 国際学術雑誌と近代科学の進歩』(慶應義塾大学出版会)



〔思想・歴史部門〕

『囚人と狂気 ―― 一九世紀フランスの監獄・文学・社会』(法政大学出版局


  • 小山 俊樹(こやま としき)(帝京大学文学部教授)

五・一五事件 ―― 海軍青年将校たちの「昭和維新」』(中央公論新社

グリーフケア/スピリチュアルケア研究のための入門書

死別の悲しみを超えて (岩波現代文庫)

死別の悲しみを超えて (岩波現代文庫)


スピリチュアルケア入門

スピリチュアルケア入門

スピリチュアルケア研究

スピリチュアルケア研究

  • 作者:窪寺俊之
  • 発売日: 2017/11/15
  • メディア: 単行本
悲嘆とグリーフケア

悲嘆とグリーフケア

はじめて学ぶグリーフケア

はじめて学ぶグリーフケア




グローバルヒストリーにおいてマストなテーマ:奴隷貿易研究の基本文献

奴隷船の世界史 (岩波新書)

奴隷船の世界史 (岩波新書)

奴隷船の歴史

奴隷船の歴史


近代世界と奴隷制―大西洋システムの中で

近代世界と奴隷制―大西洋システムの中で


アメリカ黒人の歴史 (NHKブックス)

アメリカ黒人の歴史 (NHKブックス)







注目の中世東西比較交流史の最新研究論集

東西中世のさまざまな地平


最大のポイントは、欧文版も同時出版されているということでしょう。
出版社の内容紹介ではグローバルヒストリーと述べているが、どの領域でもグローバルヒストリーが喧伝される昨今、敢えての「東西」のくくりを出した意義は個人的に評価したい。というか、理由はここでははしょるが、このご時世に今の「日本」で比較史を意識するなら、グロヒスより「東西」推しで行ったほうがいいと思っている。



内容紹介

従来であれば知り合う機会のなかった東西の中世研究者がオンライン上で各種情報源,論文,参考文献を共有する「メネストレル」という知のネットワークで国際的・学際的に交流し,日本で行われた国際シンポジウムを通じてその成果を結実した。本書収載の論文は,日本語版と欧文版によって広く世に問われるものである。

「メネストレル」はインターネットとともにこの20年間に地理的,言語的障壁を乗り越え,史資料の収集と研究の職務に従事している,図書館や文書館の学芸員,大学教員,研究者,エンジニアなど200名余の中世研究者を結集させた,類例のない国際的ネットワークである。

本書の第Ⅰ部「文化交流をひらく」では,歴史的背景の異なる極東,極西,ユーラシア大陸の史資料や文物などから文化交流の問題を考察した8論文を収める。第Ⅱ部「戦争と平和,しるしとテクスト」の7論文では,ヨーロッパと極東(主に日本)の比較論的見地から,中世における文化交流のさまざまな様態に関する考察が示され,多種多様な中世の世界観を示唆している。

中世史の再検討を通して,国の枠組みを超え多様性や文化の共存などを重視する「グローバル・ヒストリー」の時代の新たな異文化交流の書。

目次

凡例
イントロダクション(編集委員
メネストレル主催国際シンポジウム《中世における文化交流――対話から文化の生成へ》(Ch. デュクルティユー(有田豊訳))

Ⅰ 文化交流をひらく――「東洋」「西洋」「東洋―西洋」

矢代幸雄と大和文華館の設立――文化交流の場としての美術館(古川攝一)
 1 矢代幸雄の経歴
 2 大和文華館の設立とその活動―国際交流の「場」としての美術館
 おわりに

中国・宮廷コレクションと東アジア文化の生成――南宋復興秘閣の成立と江南仏教世界の変容(塚本麿充)
 はじめに――中国皇帝コレクションと東アジア社会
 1 北宋の宮廷コレクションの成立(960年)とその崩壊(1126年)
 2 南宋復興秘閣とそのコレクションの理念
 3 南宋臨安の文化的復興と江南仏教世界の再生
 おわりに――南宋から南都へ 12~13世紀の古典文化の消失と復興事業

文化交流としてのキリスト教への改宗?――中世の事例と比較に向けた視座(A. ゴチエ(成川岳大訳))
 1 文化的移行としての改宗
 2 改宗は反作用的でありうるか?
 3 新たな課題の発生源としての布教現場
 結論

中世日本人の異国観(伊川健二)
 はじめに
 1 高山寺派とその異国観
 2 室町時代におけるインドもしくは「南蛮」
 おわりに

窓としての図書館――西方のブルゴーニュ公と東方の魅惑(H. ウェイスマン(佐藤龍一郎訳))
 1 ブルゴーニュ公の蔵書
 2 アレクサンドロス大王
 3 蔵書中の他のテキスト――若干の例から
 結論

英仏間の和平を求めて――ジョン・ガワーとフィリップ・ド・メジエールの教訓的書簡(小林宜子
 1 海峡横断的な平和運動――著述家と外交使節のネットワーク
 2 ガワーが描く平和のヴィジョン
 3 開かれた書物としてのトレンサム詩集

13~14世紀のイタリアで書かれたフランス語――人口言語,混成言語,あるいは接触言語? 若干の事例から(A. ロシュブウェ(島崎利夫訳))
 1 不鮮明なコーパス――13~14世紀のイタリアにおけるフランス語とそのテクスト
 2 遠心的視点から多元主義へ――接触に基づく新興の理論的アプローチ
 3 諸層の識別,言語学的収束の研究――若干の事例

マンドレイクの採取法――ヨーロッパ・中東・中国における知識の往還(山中由里子,I. ドラーランツ(執筆協力))
 1 起点:中国
 2 ミッシング・リンク
 3 イブン・バイタールの薬学書
 4 伝承者としてのバヌー・サーサーン
 結論
  補遺:イブン・バイタール著(山中由里子訳)『薬用植物と食物全書 Jāmi’li-mufradāt al-adwiya wa l-aghdhiya』(3/4, pp.10-12)

Ⅱ 戦争と平和,しるしとテクスト――比較史の試み

一揆/盟約――中世日本とヨーロッパにおける共同体の言語と表象(S. フェレンテ&佐藤公美(佐藤公美訳))
 はじめに
 1 14世紀の荘家の一揆
 2 一向一揆と共同体のことば
 結論的考察

「日本紋章学」と決別するために――日本の家紋と西洋の紋章:標章比較研究の一例(L. アブロ(江川溫訳))
 1 分析フレームワークの設定
 2 「紋」という標章体系を具体事例として研究する
 3 比較標章論の意義

西欧と極東における印章――美術史学からの比較の試み(A. ヴィラン,田邉めぐみ(執筆協力)(頼順子訳))
 はじめに
 1 西欧と極東における印章の歴史
 2 比較の諸要素
 3 比較によるアプローチから文化交流へ

騎射に見る日欧の中世軍事文化の比較――戦い方と身分の表象(堀越宏一)
 1 騎馬と騎射の起源
 2 騎乗と騎射の導入――日本の場合
 3 騎乗と騎射の導入――ヨーロッパの場合
 4 中世日本の軍事制度
 5 中世ヨーロッパの軍事制度と弓・弩の位置づけ
 6 飛び道具をめぐる日本の武士と西欧の騎士の比較

比較史における宗教と戦争――「長い中世」の日本と西欧(Ph. ブック(斉藤恵太訳))
 1 中世における宗教と戦争
 2 戦争で人を殺めた後で
 3 境界に立つ者たち
 おわりに

ローランの歌平家物語』――比較研究の可能性について(黒岩卓& B. グレヴァン(黒岩卓訳))
 はじめに
 1 近代日本と佐藤輝夫の研究歴における『ローランの歌
 2 「口承」理論の位置づけ
 3 著作内部における相互的なまなざし
 結論

中世における東洋の教訓物語――データベース「中世教訓逸話集シソーラス」による索引化のための批判的・比較論的アプローチ要素(J. ベルリオーズ(室崎知也訳))
 1 西洋と東洋の教訓物語
 2 ThEMAと極東への接続
 3 東洋の教訓物語の索引化
 4 「牝鹿と隠者」と「聖人と鳥」――比較研究の二つの例
 結論

索引
編者・執筆者・訳者・協力者紹介
欧文目次

第37回渋沢・クローデル賞から注目する研究



歴史学におけるドラキュラ公研究必読史料集:ヴラド・ツェペシュ関連史料集

ドラキュラ公ことワラキア公ヴラド3世(Vlad III, 1431-1476)の史料集が爆誕していた。
15世紀ルーマニア史、ドラキュラ公研究者は必読・必携では。
まだ続刊がある模様。

Corpus Draculianum. Dokumente und Chroniken zum walachischen Fürsten Vlad dem Pfähler 1448–1650, 3Bds- (Wiesbaden: Harrassowitz, 2017-).

紀元千年の(逆?)グローバルヒストリー

アメリカの東洋学を代表する碩学の入門書。


著者の邦訳書。

図説シルクロード

図説シルクロード